………唯一の肉親。
それは、主や友とは違う深い絆を持った、唯一の人間。
……その絆はどういう存在であるのか。
者によっては何にも代えがたい愛しいものでもあり………それとは真逆でしかないものでもある。
そう……同じでも、同じではないのだ。
「………レト、君の母親ってどんな人だったの?」
ザイにしがみついて泣きわめいていたレトは、ようやく落ち着きを取り戻した。
厚い雲の上に浮かんでいるであろう太陽は次第に傾き、夕闇へ役を譲ろうとしていた。
何かをする訳でも無く、何処に潜んでいるのかも分からない刺客を警戒して塔の外にも出ず、薄暗い部屋で雪景色を眺めながらぼんやりとしていた。
そんな時、ずっと口を閉ざしていたユノは、ふとレトに呟いたのだった。
隅の方に腰掛けていたサリッサが一瞬二人を見たが、すぐに視線を逸らした。
隣で相変わらず眠そうな顔でぼーっとしていたレトは、天井を見上げたまま瞬きをし、口を小さく開いた。
「…………僕の母さん…?……………母さんはね………」
………。
………死んでしまった、母さんは……。
母さんは………。
静かな空間で響き渡る、子供同士の何気ない会話。
いつまで経っても答えないレトの向かい側で、ただ淡々と………ザイはナイフを磨いていた。


