「……今戻った。すまない…途中、新雪に身体半分が埋まってしまってな。……抜け出すのに時間が掛かった。………レト、立ちなさい」
…と、腰から下が雪塗れのザイが相変わらずの無表情で普通に戻って来た。
そしてこの、室内中央で蹲る息子と、それを引っ張る王子、苦笑しかしていない王妃、パタパタと羽をばたつかせて飛ぶ練習をしているが実際は五ミリも浮いてない雛鳥…等が役者の奇妙な光景を目の当たりに、静かに顔をしかめる。
助かった…!と言わんばかりに、ユノはザイに視線を移した。
「一流の狩人にしてはまた変なところで抜けてるね……じゃなくて!!ちょっとこれ!!君の息子がなんかおかし…」
「父さぁ―――ん!!」
この問題児は狩人としての瞬発力を活かして勢いよく立ち上がり、わぁーん…とザイに駆け寄ってひしとその巨体に抱き付いた。
まるで子供が大きなテディベアにしがみついている様な光景…。
ああ、レトはそういえばまだ11歳だったよね…と、初めて子供らしい面を見せたレトを、二人はぼんやりと眺めていた。
…小さな両手でザイのマントを引っ掴み、顔を埋めたまま「五分って言ったのに五分って言ったのに五分って…」と泣き声で呟くレト。
……そんな、弱々しい息子を見下ろしながら、ザイは溜め息を吐き、無言で息子の頭をよしよしと撫でた。
「………レト、その心配性は何とかならないのか。………分かった分かった……今度は時間通り戻って来るからな…」
な?な?…と、肩を軽く叩いてあやすザイが、これまた初めて父親らしく見えた。


