そう、まるで何かに取り憑かれたかの様に……突然だった。
「………どうしたんだろう…どうしたんだろうどうしたんだろうどうしたんだろう……五分だよ父さん父さん父さん…何処行ったの何処何処何処何処…」
…と、言いながら頭を抱える少年レトの奇行は、止まない。
この豹変振りに、サリッサもただ茫然と見ている事しか出来ずにいた。
「………レト君……だと、思うわ…よ」
……とりあえず、あそこで喚いているのはレト本人だろう。それだけは確かよ、とサリッサは自信が無さそうに言った。
「………ね、ねぇレト…」
ユノは恐る恐るレトに近寄り、彼の側でしゃがんだ。
レトの顔を覗き見ると、さすがに泣いてはいなかったが、うっすらとした涙の膜がその瞳に浮かんでいた。
うわ、でもやっぱり泣きそう。
「……どうしたんだいレト…?………………ザイなら帰って来るよ……多分……じゃなくて絶対。………だからそんな狂ったみたいに心配しなくても…」
「……崖から落ちたのかも」
「え?」
直後、レトはスッとその場で立ち上がり、青ざめた顔でキョロキョロと辺りを見回した。
「木から落ちたのかも…それで足を折って動けなくなって獣に囲まれて抵抗して抵抗して………あああ父さん!!」
うわああ―、と叫びながら部屋中を忙しなく歩くレト。その後ろを、特に意味も無くアルバスがヨチヨチとついて行く。
「獣の巣穴に間違って入ったのかも…迷って出られなくなって獣に見つかって抵抗して抵抗して………あああ父さんが!!」
「君の中のザイってどの仮想でも生きる道は無いのかい!?」


