何もせずに大人しく待つ事が嫌いなユノにとって、これは何かの拷問にも思えた。
………それに加え、もう一つ。
………………彼を悩ませるものが、もう一つだけ……何の前兆も無く現れた。
そう……先に述べた様に…順調ではない。
頭を抱えるユノの目線の先で………悩ませるものは喚いていた。
「―――…父さんが帰って来ない父さんが帰って来ない父さんが帰って来ない父さんが帰って来ない……」
あれ?おかしいな?…と、ユノは呆気にとられた表情で首を傾げながら、傍らのサリッサに囁いた。
「………ねぇお母様、あの隅の方で膝を抱えて泣きそうな顔で何か喚いているのは………ひょっとしたらさっきまで大人しかった筈のレトだったりするのかな?」
日が暮れるまで待とう、と決めた後……「外を見て来る……五分で戻る」と言って塔から降りていったザイを見送ってから………五分後。
……突然少年は、ああなった。
「…帰って来ない父さんが帰って来ない父さんが帰って来ない……五分経ったのに経ったのに経ったのに……」
………何の呪文だろうか。
常にぼんやりとしていて、眠そうな目で四方八方をぐるりと意味も無く見回し続けている筈のレトが………急に、親離れなんか絶対に出来なさそうな、不安に押し潰されている子供らしい子供に、ものの五分で変わってしまった。
五分経つと同時にレトは弾かれた様にいきなり立ち上がり、室内の端を行ったり来たりした後に隅に座り込み、ブツブツと呟き始め…………今に至る。


