―――…銀のピアスから放たれた、その小さな反射光に………………ウルガを真上から見下ろす、一つの緑の宝石の様な、美しい眼球が……眩しそうに、瞼を閉じた。
薄暗い天井から彼をまっすぐ見詰める緑の眼球は、二、三回瞬きを繰り返すと、瞼を閉じて、彼の頭上から消え失せた。
何かに怒り、何かに絶望し、何かに恐怖するウルガの姿。
その姿を本人にも、誰にも気付かれない様に、見ていたそれは………魔力に塗れた歪んだ空間を越え………主人の元に帰り、同化した。
「………………」
同化の瞬間に伴う、眼球の奥に走る小さな痛みに顔をしかめ、ログはそっと右目を押さえた。
暗い天井を見上げ、一人で首を傾げ………握り締めていた杖を再度握り直し、ログは闇で覆われた室内をとぼとぼと歩いた。
杖の先で軽く床を突きながら、ログは部屋の扉に向かう。
…貧弱な細い手でそっと扉を開け、小さな隙間に身体を滑り込ませた。
……隣室と繋がっている今いる部屋も、薄暗さは変わらない。
………が、ログの見詰める先には………見慣れた主の影が一つ、ぼんやりと浮かんでいた。
主は今朝起きてからずっと、手元のナイフの刃を、飽きる事無く見詰めている。
部屋の中央にある椅子に腰掛け、ナイフの妖しい光沢をただただ……見ていた。
………沈黙で占められた室内。
妙に不気味で、恐怖さえも感じさせるその空間に………ログは、ポツリと言葉を添えた。
「―――………一人……………見合う者が…」
………その言葉の真意を知る主はログに視線を移し。
…笑った。


