「……おい貴様…!………何をふざけたことを言っているんだ!…………何処かに隠し持っているんだろう!!」
鍛えあげられた頑丈な手が、やや荒々しく老人の肩を掴んだ。
……しかし、当の本人はその手を振り払うどころか抵抗する気配も無く、やんわりと笑顔で対応し続ける。
「………隠し持つ………。……確かに、見えない所に武器の一つや二つ、我等総員持っております。…一応、私はこれでも兵士の端くれですからな」
「………何だと!………どういうつもりだ!隠し持つなど………………我が国への敵意と見なすぞ!!使者などと…嘯いたな……!!」
完全に頭にきた兵士はパッと後退し、握っていた槍の先を使者達に向けた。
前後左右を囲んでいた兵士達も、それに倣って次々と槍を傾ける。
………最初から張り詰めていた空気が、また更にピリピリと張り詰めたものへと変わってしまった。
……老人は自分達を囲む兵士の壁をゆっくりと見渡し………肩を竦めて小さく溜め息を吐いた。
「………やれやれ。………こうなると、話し合いでは解決出来ないのでしょうか?……………………争う気など、毛頭御座いませんが………」
突き付けられた鋭利な刃に少しも怯むこと無く、苦笑を浮かべる奇妙な老人。


