亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

宣言した通り、二人は山と谷を越えた先にある神声塔へ歩を進めた。

昼間だというのに、やっぱり空は薄暗い。
ちらついていた雪の量が段々と増えてきている気がする。


今夜も歯の音が止まらなくなる程寒いのだろうな、と考えながら、イブは静かに体温を二、三度上げた。



「……そう言えば……さっきまでいた街で聞いた…『禁断の地』の事だけど………あれはどうする―?」

「…………ああ……あれか」






あれ、というのも…数分前に遡るのだのが。

…食糧の買い出しついでに『禁断の地』の事を尋ねていると……有力かどうかは分からないが、とにかく一つの情報を入手したのだ。









「…………『禁断の地』から少し離れた場所の小さな街に、昔…城仕えしていた人間がいる………か」


五十年以上前の昔。

まだ王政が存在し、この国に王が君臨していた頃に城に仕えていた人間が……戦火を逃れ、その街でひっそりと暮らしていると言う。
………今は亡き国王陛下の側で仕えていた、医者であったらしい。

………その人物なら、『禁断の地』…城の事をよく知っている筈だ。城に潜む化け物とか嘘臭い存在の事も分かっているに違いない。



………だが商人の殆どが、口を揃えてその人物をこう言った。





















―――あれも、化け物だよ。
















医者という善人面をした、奇怪な人間………気味悪がって誰も近寄ろうとはしない。





………そんな、曰く付きの人間だそうだ。





…化け物だか何なのかよく分からないが、城の事を知っているのなら是非訪ねて情報を得たい。