亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



「うーん…どうしよ―か?この事隊長に伝えておく?」

そう言いながら口から分身の赤い蜘蛛を出そうとしているイブを、直前でリストは止めた。


「………これはあくまで憶測だ。早合点は良くない。それに、伝達はつい先日したばかりだろう?少しは間を空けないと感づかれる。………それに、陛下ならもう分かっているかもしれないしな…」


敬愛する我等が女王陛下は、自分から他人に答えを求めようとはしない。ヒントも何も要らないと言う。

常に先の先を考え、答えを導き出す。
………また、それが当たっているのが凄いところだ。





「………俺達は俺達で、少しでも情報を集めるぞ……陛下の旅が、少しでも軽くなる様に…」


手当たり次第、集められる情報は集める。バリアン兵士の大群に比べて人数の少ないこちらは、得られる情報も時間も少ないのだ。
迅速な判断と動きを使い、維持しなければならない。

「………まずは神声塔。そこで王族と出くわしたりでもすれば一番良いんだがな。………後はバリアンの動きと………『禁断の地』の情報の入手……」


仕事は山積みだな、と溜め息を吐きながら、リストは未だに茫然自失状態のバリアン兵士の首根っこを掴み………片手で、生い茂る針葉樹林に投げ飛ばした。


ぽーんと人形同然の扱いで掴んで投げられた兵士の身体は、樹木の太い枝に引っ掛かり、宙吊りとなった。

クリスマスツリーの飾りの様に、他二人も投げられて枝に引っ掛けられた。


彼等にかけたイブの術は半日で解ける。ついでにこの間の記憶も無くなっている。
かと言ってそのまま放置は可哀相だから、獣が寄り付かない様に木の上にぶら下げてやった。


凍死しないことを祈ろう。