「……何なのよ……あれは…!」
走り続けながら、ドールもまた、上空にぼんやりと浮かぶ青白い魔方陣を見上げて叫んだ。
魔方陣なんて、今まで腐る程見てきた。
魔の者が多いバリアンでは、日に一回は目にする複雑な芸術…。
だが………あんな巨大なものは見た事がない。
発せられる光は太陽の様に眩しく、悍ましい輝きを宿していた。
この城一帯を覆い尽くす程のそれは………魔力の大きさそのものを表している。
………この魔方陣を発動させている術者は、非常識な……化け物染みた強さだ。
……人か?それとも…。
(…………本当に…化け物かもね…)
……ゆっくりと回転する空の魔方陣の中に、細かな文字がつらつらと描かれていく。
…直後、その美しい陣から……………きらきらと光り輝く何かが……舞い降りてきた。
………雪…?
………雨……?
………………氷…。
「―――!?」
バリアン兵士は咄嗟に剣を構え、物凄い速さで雨の様に降り懸かってきたそれを一刀両断した。
バリアンの紋章が刻まれた鋭利な剣が裂いたのは………一メートル大の氷柱。
恐ろしく尖ったそれは、上空の魔方陣からあても無く次々に降ってきた。
柱に、地面に、凍て付いた木々に……冷たい刃は容赦無く突き刺さる。
「ちっ…!」
数十本もの氷柱の群れが、走るドールとハイネの頭上に飛来してきた。
ドールは無言でハイネを後ろに押しやり、抱えていたハンマーを頭上に向かって振り上げた。


