ハンマーは、空間自体を叩いていた。
波打つ空気。
あっという間に大きく、広がり続ける衝撃波により、道の両端に並んでいた柱が、強風に煽られたかの様に根元から折れていった。
歌声に満ちたこの空間に、ドールの破壊による低い騒音が割って入った。
雑音が混じったためか………突如、美しい歌は、中断された。
エコー達はパチパチと瞬きを繰り返し、音感が狂ってしまったのか、仲間同士で見つめ合いながらオロオロとしていた。
高周波の歌声地獄から解放された一同。
バリアン兵士らは口を押さえて咳き込んだり嘔吐したりと忙しい。
激しい目眩に襲われながらも、何とか立ち上がるハイネの胸倉を掴んで立たせ、ドールは長いハンマーを肩に抱えた。
………腹立たしいが………逃げるなら………今しか、ない。
「走れハイネ!!………退避!!」
……この際、口うるさいバリアン兵らの小言は無視だ。
退避命令は出ていないが……奴等の命令よりも本能からの忠告の方が最優先。
どうでもいい。勝手にしろ。
ふらつく足を酷使して、ドールはハイネの腕を強引に掴んで走り出した。
………出口へ。
勝手な行動を取り出したドールに、未だ両腕を突いて身悶えるバリアン兵士は奥歯を噛み締め、剣を杖替わりにしてゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「……おのれっ…………っ………!?」
鈍痛が響く耳を押さえながら、兵士はふと真上に顔を上げた。
………途端、彼の目は大きく………見開かれた。
雪雲を背景に、上空から自分達を見下ろすそれは…………。
巨大な、魔方陣だった。


