亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

揺らぐ視界の中で、水面から身を乗り出して天を見据えながら喉を震わせて歌うエコーの群れが見えた。

数え切れない程の半透明な少女の姿をしたエコーが、息も途切れる事無く歌い続ける。

その調べは、止む気配は無い。




(………このっ…!)


ドールは噛み締め過ぎて血が滲んだ唇を舐め、ガクガクと震える腕をマントの内に突っ込んだ。

苦しみに耐えながら掴み出したのは………何の変哲もない、薄汚れた細い鉄鎚……鉱石を採掘する際に使うただのハンマーだった。



「―――ハイネ!!」

側で頭を抱えて悶えていたハイネを呼び、ドールはハンマーの細い柄を両手で握り締めた。




「………伏せて…」


低く屈んだ体勢で腰を捻り、短いハンマーを構えた。



「…いな………さいっ…!!」














両手を伸ばし、構えたハンマーをあらん限りの力を振り絞って横に振り回した。







綺麗な弧を描くハンマー。

細く、短い…いとも容易く折れてしまいそうな、何とも頼りないそれは……。



振り回される直前。













―――………長さ約二メートル強の柄、三角錐の形をした人の頭程もある鉄の塊が先端に付いた………ハンマーとは言い難い、恐ろしく長いハンマーへと変化した。









けたたましい歌声と凍て付いた空気を押し退けて、巨大なハンマーの歪な鎚は、主人の意思通りに半円を描き………何も無い空間でピタリと、静止した。











………その、直後。






静止したハンマーを中心に、見えない衝撃波が発生した。

それは波紋の様に広がり、辺り一面に分散していく。