だがその悪戯好きのエコーの群れに何故、自分達は囲まれているのだろうか。…いや、囲まれているのではない。彼等の縄張りに踏み入ってしまったのだ。
これがどういう事態を招くかは皆目見当もつかないが………良くは、ない。決して。
注がれる視線は、無邪気な子供のそれと変わらない。
それがかえってまた不気味に思えて仕方無い。
「………バリアンの忠実なる兵士の方々…」
周囲に目を凝らしながら、ドールは薄ら笑みを浮かべて声を漏らす。
「………あんた達の癪に障る命令だけど………退避…っていう選択肢はあるのかしら?」
「………貴様、勝手な行動は…」
「そんな事を言っている場合じゃないでしょう……!このヤバそうな状況を分かってそんな事を言っ…」
「―――……歓迎の宴に……………………………鎮魂歌を…」
美しい、音色だった。
完璧なまでに美しいその調べは、歌声は、全てを魅了し……………………崩壊を招いた。
例え様の無い、この世のものとは思えないエコーの美しい歌声は………空気と交わり、風に乗り、吹雪と同化し………。
………頭を、狂わせた。
「うああっ!?」
「………っ…!」
黒板を引っ掻いた様な、あの不快な甲高い音の……更に数十倍の不快な音。
辺り一面に響き渡る歌声は鼓膜を破る勢いで劈いてくる。


