「………」
城へ続く道の真ん中辺りまで進んで来ていた時だった。
再び、ドールは足を止めた。
何か聞こえたから。
何か気配がしたから。
………そんな曖昧なものではない。
―――見られている。
それもあちこちから。
………何十もの瞳から。
この突き刺さる視線の数々に、さすがのバリアン兵も気付いたらしい。
マントを翻し、次々に腰の剣を抜き出した。
………ザバッ、と……道を囲む池から水音が聞こえてくる。
幾つも。幾つも。
色んな所から。
クスクス。
クスクス。
氷が張った池の中から、少女の笑い声が聞こえてくる。
水の中を、何か半透明の様なものが漂っている。
………まるで…人魚の様な…。
「………………エコーだ……」
不意に、ハイネが呟いた。青ざめた顔でキョロキョロと辺りを見回す。
「………『エコー』…?………ハイネ、それは何なの…」
パキッ…と、池の一部にヒビが入ったのが見えた。
ハイネは震える声で答えた。
「………魔獣………水に住む魔獣です…。バリアンにはいない奴等で……普段は大人しくて、危害を加えないんですが……………………………………………………洒落にならない…悪戯を仕掛けてくるって……聞いたことが……」
「………………例えば……?」
「……………歌で誘い込んで…溺死させるとか…」
なるほど、洒落にならない。


