………ふと、ドールは足を止めた。
ぶつかりそうになったハイネは、慌てて寸でのところで立ち止まる。
バリアン兵も無言で歩みを止めた。
突然止まってしまったドールに、ハイネは訝しげな表情で声を掛ける。
「………長?………………どう…されましたか…?」
「………」
ドールは何も答えず、ぐるりと辺りを見回した。
何処を見渡しても、目に見えるのは見飽きた雪景色と生気の無い城の全貌。
そして無愛想なバリアン兵士と……ハイネと………………自分、だけ。
(………)
「………………ハイネ……」
「……何ですか?」
何かに警戒しているドールに、ハイネは首を傾げつつも同じ様に辺りを見渡す。
………しかし、これと言って気に止めるものは何も無い。
………何も無い様に……思える…。
「………………何か………声が聞こえなかった……?」
「………声…?………長、おっかないこと言わないで下さいよ………まだ昼前ですよ…」
「………」
………声。
そう………声が聞こえた……気がした。
女性……女の子…の様な………甲高い声。
笑い声。
上品に口元に手を当てて笑みを零す貴婦人の様な………。
…………………笑い声。
「………………何でもないわ……先を急ぎましょう…」
悪戯な、風の音だったか。
それともやはり。


