亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「………それに…使者ごときに会わぬとなると………燐国に畏怖している、ととられますぞ」

サラリと言い放ったリイザの言葉に、老王は目を見開いた。

「………い…畏怖などと……!?………このバリアンを治めるわしが……若輩の国を恐れるだと…!」

わななきながら憤慨する老王を見上げ、「確かに」とアイラは頷く。

「………視点を変えてみて下さりませ、父上。………相手は我が国の力量を見定めるために……試しているのかもしれません。………そう考えれば、父上…………我等、王子の身分につく人間は、会うべき…」

「………会わねば、なりますまい……」








………二人の息子に揃って意見され………老王は口ごもった。

「………」




「―――フフフフッ!確かに、王子のおっしゃられる事は的を射た正論!…王よ、父としても王としても、まるで面目が立ちませんねぇ!」

「――黙っておれ!!口が過ぎるぞ!!」



始終、親子の会話のやり取りを黙って傍聴していたケインツェルが、賢才な息子二人に困り果てる老王の滑稽さに、堪らず吹き出した。

老王の振り回した杖やナイフを、ことごとくこの側近は交わしていく。
……一発位当たれば良いものを!!余計に腹が立ってくる。


「………そういう訳です、父上。………あちらの使者との謁見の、私とリイザの出席……御許し願えるでしょうか…?」


相変わらずの、ニコニコとした不動の笑みと、貼り付けた作り物の笑みが、また揃って老王に向けられる。




………ケインツェルの存在を一旦意識外に放り投げ、老王はしばらく考えた末………大きな溜め息を吐いた。




「…………………良かろう…」