数十年前のバリアンによる襲撃を最後に、廃墟と化したデイファレトの城。
上空から見えるその姿。
守りの外壁や高々と伸びた塔は、隣国からの乱暴な戦火と長寿を思わせる亀裂などの痛みが点々と見られるが……廃墟と化した今でも、その神々しさは変わらない。
塔の天辺で絶え間なく靡き続ける青い国旗は、半分以上がすっかり焼け落ちてしまっていた。
栄華を失った城というものは、なんて………寂しい…。
(………まるで墓石ね…)
……そのまましばらく城の真上を旋回していると、後ろに付いて来るバリアン兵士の一人が、「降りろ」と命令口調で言ってきた。
…ドールは眉をひそめ、黙ってサラマンダーの腹を軽く蹴った。
サラマンダーは一度甲高く鳴き、地上を目指して急降下した。
凍て付いた白い煉瓦で隙間無く積み上げられた高い城壁の外に降り立ち、一行は重苦しい城門の前に佇んでいた。
何処もかしこも純白である中、目の前にあるこの城門だけは、透き通ったコバルトブルーだ。
………固く閉ざされた城門を前に、配下の男は溜め息を漏らす。
「………これ、開くんですかね…」
「……開かないなら、もう一度飛んで内側に降りればいいだけの話よ。………城の探検に来たんじゃないのよ?分かっている?……ちょっとした下調べ………そうでしょう?」
ドールは背後の兵士に一瞥して言った。
兵士は無言で軽く頷いた。
王族の捜索は、時間と人手を要する。
闇雲に捜し回るより、先回りして待ち伏せするのが賢明だ。


