亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

……ドール達とバリアン兵士達。微妙な距離を取り続けるこの二つは縦長い列になって、吹雪で覆われた広大なデイファレトの上空を、巨大な赤い鳥…サラマンダーに乗って飛んでいた。



炎を蓄えた美しい紅色の羽も、今は悪戯な吹雪の吐息に負けているのか、縮こまってしまっている。


「………サラマンダーは防寒効果のある魔術をかけてあるみたいだけれど………この寒さ……魔術が解けるのも時間の問題ね…」

「お、長…恐ろしい事を言わないで下さい……」

冗談じゃない、と青ざめる男を無視し、ドールは地上を見下ろした。





デイファレトの大陸を、北へ、北へ…。
真北にある、深い山々と天にも届く様な険しい崖の切れ目に滑り込んで行くと………その先は、純白の世界。

今まで見てきた中で、一番白い世界。

細かな吹雪は止む事を知らず、日の光さえもその場所を避けているのか、或いは忘れてしまっているのか………隔離された世界がそこにはある。

真っ白な空気なのではないかと思うくらい、濃厚な白さを帯びた冷たい空気。










その、奥。

更なる奥に…。



















「―――……あれね…」






















………静かに、静かに眠る………巨大な、純白の……。



























「―――…あれが……………………………………この国の、城…」
























……戦火に追われ、たくさんの人間の命がそこで尽き果てていった………白き城。

…今は主人無き、王座の入れ物。














―――………孤城だ。