立ち寄った街で購入したコンパスを取り出し、目指すべき城への方角を見定めた。
デイファレトの城があるのは真北だ。その方角へ目を移すと、先にあるのは純白で覆われた果てしなき空間だけ。
………あの向こうは、もっと白く、冷たく…………寂しいのだろうか。
「………合流は当分先か。…良かったなジン、寿命が延びて。………もしかして寂しいか?毎日毎日追いかけ回して来るお転婆娘がいないと…物足りないだろうな…」
「………………陛下…」
「分かった分かった…。…からかうのは、ここまでにしてやろう」
もう止めてくれと言わんばかりの切ないジンの声に苦笑を浮かべ、ローアンは進路を変えて歩き始めた。
………どういうつもりかは知らないが、バリアンは断りも無しに独断で動いている。
自分達もこそこそと動いている点では同じだが………。
(―――………悲しい事に、双方の目的は……確実に異なる……だろう…な…)
……独断でフェンネルが潜入している事を……薄々、バリアンは気付いていくに違いない。
バリアンの使者か何かがフェンネルに来るかもしれないが……アレクセイやダリルもいるし…何より最終兵器のルウナがいるから、多分大丈夫だろう。
…だが……危険は大きくなる。
ローアン自らがデイファレトに入っていると知れば、非常識なバリアンはすぐにでも刃を向けて来るだろう。
………目立たぬ様に。先程の様な襲撃は、今からはもう、何度も繰り返してはならない。
………二つの国から見下ろされているこの国。
そんな国の次なる王とは…一体…。
「―――…どんな人間……なの、か」


