亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

赤い光の瞬きが消えていくのと同時に、蚊の鳴く様なか細い、聞き慣れた声が木霊した。







『―――…――………イブ=アベレットより伝達、伝達…こちら潜入班はデイファレトの南東の地点に有り。作戦により当班とそちらは神声塔にて合流する予定であったが………―――…………………うぁあぁぁ面倒臭っ!!面倒臭っ!!マジで面倒!!こんなガチガチで話してたら頭おかしくなる!!もう良いよね?もうタメで良いよね?イブちゃん繊細でか弱いから知恵熱で死んじゃう。………ってな訳で―、こちらで調べたい事があるっていうか色々諸々と謎だらけなんで、合流はもう少し後が良いな―とか思いました―。あたしらはそのままとりあえず神声塔に行きま―す。隊長はゆっくりのんびり、なるべく目立たない様にお城を目指して下さ―い。最近嫌な空気バリバリなんで。また詳しい事は連絡しま―す!!……………………………………………―――………ジン、憎い憎い憎い憎い……禿げろ禿げろ禿げろ禿げろ禿げろおっ死ねぇ―………………………………はぁ―………』

















プツン、と回線が途切れた様な音がした直後、イブの声は止んだ。













「………」






ジンは沈黙を守り続けている。
………まるで呪い……いや呪いでしかない、嫉妬と殺気で出来た最後の呟きを聞いてしまった本人は………一体、どんな表情を浮かべているのか。







「………だ、そうだ。さて……神声塔を目指していたが…ここからは方向転換せねばならないな…」


何も無かったかの様にケロッとした表情でローアンは溜め息を吐いた。