亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

断固、ジンは否定した。
“闇溶け”で彼の表情は分からないが、不機嫌そうに歪んでいるであろう面が…手にとる様に、分かる。







………何を隠そう、ジンはあのアレクセイの正真正銘の孫だ。

ジンは祖父であるアレクセイを、それはそれはもう酷く嫌っているらしく…先に述べた様に、顔を合わせれば口論、同じ場所にいるならば最低五メートルの距離は取る。

口喧嘩で彼の口から飛び出て来るのは…「ジジイ」、「万年単身赴任野郎」、「疫病神」、「女泣かせ」……等々。

…可愛い筈の孫に牙を向けられ、アレクセイもほとほと困っており、毎日夕方のティータイム辺りにおよよよ…と姑に苛められた嫁の様に泣き付いて来る………のは、ローアンとルウナだけが知っている事実。





まあ、そんな現状になってしまったのはアレクセイ自身にも原因がある訳で……泣き付かれても、正直どうしようも無い。



もう溜め息しか出ないアレクセイなど無視して、我が道を行きながら立派に成長し続けるジン。

改善策が見当たらないこの二人が仲の良い家族になるのは、まだまだ先の話だろう。





………もう、勝手にしてくれ。













最寄りの村…と言ってもだいぶ離れた場所にあるが、その地を目指すべくひたすら積雪を踏み締める。

何処を見回しても、真っ白な山、山、山…。
中には吹雪に見舞われているのか、霧に包まれた様に面影が見えない山もある。


方角一つ間違えれば、とんでもない場所に辿り着くだろう。
……その前に遭難するか。







「………もう片方のグループは……今どの辺りだろうな……」


………イブとリストのコンビは……何処を歩いているのか。