亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

「………父上、我等はその様な不逞の族に隙を見せる程、弱く育てられた覚えは御座いません」

「………リイザ…お前まで。………二人して何じゃ…」

―――第2王子である次男のリイザ。

兄のアイラと違い寡黙で、無表情な王子。
……まだ12歳という成人さえなっていない子供でありながら………その言動も態度も、どれを見ても子供らしくない。

……今こうやって向かい合っているリイザは涼しげな笑みを浮かべているが、彼をよく知る者からすればそれは貼り付けられた仮面。その作られた表情の裏で何を考えているのか、我が子ながら、老王はよく分からない。



………兄であるアイラが次の玉座につくことを不満に思っているのかと考えたこともあったが………リイザはその辺は重々自覚しているのか、会話する際も、共に行動する時も、常にアイラから一歩引いた所に彼はいる。

何事に関しても努めて、兄のアイラを前に立てている。


『―――父上は勿論のこと、この国の王にならせられる兄上も、尊敬しております』




もっと小さい頃から、この少年は口癖の様に言っている。


……やはり、貼り付けた笑みを浮かべて。





















「………リイザの言う通りです、父上」

リイザからフッと視線を老王に戻し、アイラはニッコリと微笑んだ。

「…どの様な紳士面をした下卑た族かは知りませんが……それはやはり、この目で確かめねば。…これから色んな意味で、付き合わねばならぬ相手かもしれません」