亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

懐かしそうに昔話を語るローアン。

………どんなに懐かしくても、それは決して良い思い出ではない。



だが、あの頃があったからこそ、今がある。だからこそ、こうやって笑いながら語れるのだ。


「―――……陛下のお話は…どれも興味深いもので御座います。………戦術の話や、戦友の話も…」


聞こえてくるのは物静かな声音だが、何処か好奇心に満ちた青年らしさが見え隠れしていた。

会話の相手であるこのジンという人間は、何を隠そう…まだ成人になったばかりでありながら、フェンネルの誇り高き国家騎士団総団長の座につく青年だ。

戦力においては群を抜き、あのリストとイブにも引けを取らない…もしかすればそれより上かもしれないという実力者だ。

その戦術もまた独特で、真っ向から戦わせるよりも隠密の方が向いている……やや変わった技を持つ。


一年前に城に迎い入れてからというものの、その秘めた戦闘能力を見抜いたローアンは、まるで弟子にでも接するかの様に、礼儀作法から剣術、騎士の習いに到るまで…ジンを鍛えに鍛えた。





………その間、イブの嫉妬が激しかった事は、言うまでも無い。













「………戦友の話…?………ああ……そういえば阿呆な戦友の話もしたな」

クスクスと笑みを漏らしながら、ローアンは過去を振り返った。

「………ええ。……陛下とは幼馴染み同然で、槍術に関しては右に出る者はいなかった……が、救い様のない馬鹿だったとお聞きしました。……その阿呆な戦友も、お亡くなりに…?」

「さぁな、知らん」


…何気に酷い事をローアンはサラリと言い捨てた。