亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

金髪らしい余所者の女は、手軽な食料を幾つか買うと、早々に市場から姿を消した。

あっという間に人込みに呑まれていったのを最後まで眺めた後、商人達は噂話を再会した。


「…………思うんだが……最近、やけに余所者を見ないか…?………寄った街や村………何処でも見るようになったよ」

「………同感。しかも、狩人並に武装してやがる連中ばかりだ。………穏やかじゃねぇな…」





ここ数日で、だ。
……頻繁に、余所者を見るようになったのは。


よく見るのは、赤色を基調とした衣服を着た者達だ。
白のマントを羽織ってデイファレトの民を装っている様だが、原住民が見ればそれはすぐに分かる。


何かこう、ピリピリとした殺気めいた雰囲気を漂わせており、おまけにマントの内にはごつい剣がチラチラ見え隠れしているのだから、無関係だと分かっていても油断ならない。




「……この間、その連中に声を掛けられちまってよ…寿命が縮まったぜ…」

「……何だ?………たかられたか?」



茶化す様に笑みを浮かべて言ったが、当の本人はパイプを咥えたまま険しい顔を向けてきた。

「………妙な話さ。…………………母親と小僧………二人で旅をしている親子を見なかったか………だと、さ」

……円陣を組む様に噂し合っていた他の商人は、互いに見合って首を傾げた。





「………そんなもの、腐る程いる……。……女は街の外に出ないものだが、最近は珍しくない………出稼ぎに行く健気な女房なんぞあちこちで見るぜ?」

「………そんな事を聞いてくるとはな……ますます怪しい連中だ…」

「………その連中も数日前からこの街にいたんだが………今日は、見ねぇな…」