物欲しげに肉片を見詰めるアルバスを追いやり、丹念に赤い跡を白で消していった。
………大体消し終え、レトは佇むユノの元に駆け寄って来た。
「………………僕達も行こう………置いて行かれちゃう……」
そう言って何気なく、レトは手を差し出した。
………だが、いつまで経っても………その手は冷たい。
……当たり前の様に、この手を繋いでくれたユノは………何も言わず、俯いたままだった。
「………………どうしたの……?」
「………」
……彼にしては珍しく、反応が無い。
また、機嫌を損ねたのだろうか。しかしそれにしても……憂鬱そうな顔だ。
………レトはどうする事も出来ずに……行き場の無くなった手をゆっくりと引っ込め、首を傾げながら、ふと………己の手を見下した。
………皮手袋を填めた小さな手は………赤く染まっていた。
雪で擦って汚れは落としたのだが………やはり、血はなかなか落ちない。
(………)
そんな自分の手とユノを交互に見やり………レトは、無表情で呟いた。
「―――………………ごめん………………汚いよね………。………………僕の手……いつも、汚れてるから………」
…レトは、ゆっくりと手を下ろした。
「………………………………子供と、遊んだ事が無いって……言っていたよね…?………………何故だい…?」
俯き、目を反らしながら言うユノ。
……一瞬キョトンと惚けて、レトは答えた。


