亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



物欲しげに肉片を見詰めるアルバスを追いやり、丹念に赤い跡を白で消していった。


………大体消し終え、レトは佇むユノの元に駆け寄って来た。

「………………僕達も行こう………置いて行かれちゃう……」

そう言って何気なく、レトは手を差し出した。









………だが、いつまで経っても………その手は冷たい。


……当たり前の様に、この手を繋いでくれたユノは………何も言わず、俯いたままだった。







「………………どうしたの……?」

「………」
















……彼にしては珍しく、反応が無い。

また、機嫌を損ねたのだろうか。しかしそれにしても……憂鬱そうな顔だ。




………レトはどうする事も出来ずに……行き場の無くなった手をゆっくりと引っ込め、首を傾げながら、ふと………己の手を見下した。














………皮手袋を填めた小さな手は………赤く染まっていた。



雪で擦って汚れは落としたのだが………やはり、血はなかなか落ちない。






















(………)

















そんな自分の手とユノを交互に見やり………レトは、無表情で呟いた。



















「―――………………ごめん………………汚いよね………。………………僕の手……いつも、汚れてるから………」

…レトは、ゆっくりと手を下ろした。










「………………………………子供と、遊んだ事が無いって……言っていたよね…?………………何故だい…?」

俯き、目を反らしながら言うユノ。

……一瞬キョトンと惚けて、レトは答えた。