―――暗闇の中で、意地の悪そうな視線がザイに絡み付く。
……仲間の男は小さく鼻で笑った。
『………その親子は狩人に護衛を雇い、旅に出た……とまでは、情報があるんたが………………その狩人が今度は消息不明でね。親子も何処へ……ってな展開になってる。…………………………………ザイ、あんたがいつからか連れてる親子………その渦中の親子だろ?』
『………』
ザイは無言だったが、仲間からすればそれは充分な答えだったらしい。
無言は肯定…と判断された。
『………………護衛があんたらザイ親子に代わった経緯は知らねぇが………注意しな。……幸いにも、護衛をあんたらがしている事は漏れてねぇ。………だが、血眼になって王族を捜す狩人が相手なら、ばれるのも時間の問題だ。………ま、最初に気付いたコム爺さんの足元にも及ばねぇだろうがな…』
『……………………………コムに、礼を言っておいてくれ』
…踵を返し、ザイは納屋の戸に手を掛けた。
『―――…ザイ』
………不意に名を呼ばれ、ザイは手を止めた。
『………………………………今回のは、マジで危険だ。………………………………助けてやりたいのは山々だが………生憎、まだ長生きしたいんでね………悪いが、俺は傍観者でいさせてもらう…。……………あんただって、まだ死にたくはねぇだろ?………レトはまだ小さいんだ。………………重たいなら、投出しな…』
『………』
ザイは納屋の戸を開け、隙間に身を滑り込ませ……。
『―――去れ』
吹き付ける風に向かって、小さく言葉を吐いた。


