「―――……父さん…何か分かった…?」
「………いいや。………当たり前だが……口を割ろうとはしなかった。唯一手掛かりになる証石も飲み込んでしまってな………」
ぼんやりと見上げてくる息子。頬に付着している血を指で拭ってあげながらザイは溜め息を漏らした。
「………お腹を開けて……取り出してみる……?」
……少し手間の掛かる作業だが。
…しかし、ザイは首を左右に振った。
「………駄目だ。………いつまでも死体の側にいるのは危険だ。………血を流しすぎたからな………獣が集まってくる…。………レト、この丘の反対側は谷になっている。………捨てに行くぞ。そっちの死体はお前が持ちなさい……」
こくっと素直に頷き、レトは父の言う通り、冷たい少女の屍の傍らに近寄った。
関節が砕けてブラブラと揺れる死体の腕を掴み、無造作に、引き摺って行った。
………そんな光景を、ユノとサリッサはただただ無言で遠巻きに眺めていた。
二つの死体を谷底に捨て終わった後、一行はすぐに神声塔には入らず、丘の下に揃っていた。
聳え立つ神声塔の天辺をちらりと一瞥し、ザイは三人を前に低い声で話を切り出した。
「………悪い報せがある。……………実は、貴方方王族のお二人の………………暗殺依頼が、裏で出回っている」
「…………暗…殺…!?」
そんな…と動揺を露わにしながら、サリッサは青ざめた。
それに反し、ユノは眉をひそめただけだった。
「………依頼主は分からない。………だが……………報奨金は…相当の額だそうだ。………先程の男と子供の狩人は、その話に乗った者達に違いない……」


