亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~













「………何でだよ……」









静寂漂う、この……奇妙に張り詰めた白と赤の世界。

隔離されてしまった様な空間に、ユノは震える声で踏み入った。




「…………どうして……!………確かに………僕を殺そうとした奴だけど………だからって………!」


傍らで佇んだまま。しかしそれ以上は、近付こうとしないユノ。



………レトはゆっくりと振り返り、そんなユノをジッと見詰めた。
……汚いものなど知らないかの様な、純粋な澄んだ瞳。

いつもの眠そうな、半開きの目。



……キョトンと、何故か不思議そうにユノを見詰めるこの少年は、首を傾げた。







「………………………どうして…って…………………………何が…?」















………何が。


……何が…?




「……何がっ…て………!」

………女の子を一人殺しておいて…どうしてそんな事が言えるのか、分からなかった。

レトの目は嘘を言っていない。
彼は本当に、本当に……分かっていないのだ。





……生きとし生けるもの、全ての命を重んじ、自然を神と崇める戦士……狩人。


実に奥深く、神秘的な彼ら狩人。







だが………。














………何かが、欠落している。





大切な何かが………微塵も無い。


彼らの何かが……麻痺している。















人の形をしているが……何か違う…違和感の塊に思えた。





形容しがたい虚無感に苛まれるユノに、レトは、小さな微笑を浮かべた。









「……………………僕……………何か…した……?」