「………何でだよ……」
静寂漂う、この……奇妙に張り詰めた白と赤の世界。
隔離されてしまった様な空間に、ユノは震える声で踏み入った。
「…………どうして……!………確かに………僕を殺そうとした奴だけど………だからって………!」
傍らで佇んだまま。しかしそれ以上は、近付こうとしないユノ。
………レトはゆっくりと振り返り、そんなユノをジッと見詰めた。
……汚いものなど知らないかの様な、純粋な澄んだ瞳。
いつもの眠そうな、半開きの目。
……キョトンと、何故か不思議そうにユノを見詰めるこの少年は、首を傾げた。
「………………………どうして…って…………………………何が…?」
………何が。
……何が…?
「……何がっ…て………!」
………女の子を一人殺しておいて…どうしてそんな事が言えるのか、分からなかった。
レトの目は嘘を言っていない。
彼は本当に、本当に……分かっていないのだ。
……生きとし生けるもの、全ての命を重んじ、自然を神と崇める戦士……狩人。
実に奥深く、神秘的な彼ら狩人。
だが………。
………何かが、欠落している。
大切な何かが………微塵も無い。
彼らの何かが……麻痺している。
人の形をしているが……何か違う…違和感の塊に思えた。
形容しがたい虚無感に苛まれるユノに、レトは、小さな微笑を浮かべた。
「……………………僕……………何か…した……?」


