柔肌と骨を貫く、独特の音。
それは小さなものだが、一度聞けば二度と耳から離れなくなる………まるで呪いの奏でる音。
……いや、呪いに違いない。
戦士が抱える呪いに違いない。
少女の胸に吸い込まれる様に……ストン…と、真直ぐに落ちた刃。
それは細い彼女の身体をいとも容易く貫き通し、厚い雪の層の奥深くにまで達した。
………一瞬で、動かなくなった少女。
レトは無言で柄を握り直し、刺さったままの剣をグッと、捻った。
………グチッ、と痛々しい音と共に刺し傷が歪み、小さな傷口から、紅よりも赤く、深い鮮血が………凍て付いた空気に飛び散った。
……ピッ…と、柄を握るレトの手、ジッと見下ろす色白の顔に、赤が飛ぶ。
……横たわる少女の下の積雪が、ジワジワと血を吸い込んで赤い大地へと変貌していった。
………純白に生える真っ赤な血が、静かに……彩られていく。
ついさっきまで生きていた事を物語る、流れる鮮血の暖かみは、あっという間に凍て付き……死んでいく。
そう。
……死んだのだ。
横たわるのは、少女ではない。
……無機質な…屍だ。
大量の血が吹き出すのを防ぐため、死体の傷口の上にせっせと雪を被せ、押さえたまま一気に剣を抜いた。
……溢れ出す血は、被せられた雪にどんどん染み込んでいく。
………赤い肉片がこびりついた刀身をその辺の雪に擦りつけ、大体の汚れを拭い終わると背負っていた鞘に納めた。


