―――…少女が怯んだ一瞬を、レトは見逃さない。
丘のなだらかな斜面を素早く駆け、積雪を崩す様にわざと雪路を削りながら勢いよく滑り降りた。
丘の上から、レトに寄って崩された細かな雪が雨の様に降り懸かり、少女の視界を覆った。
少女がのけ反ったのを確認すると同時に、レトは斜面の中腹で高く跳躍し、少女の頭上を越えていく瞬間………………彼女の弓の上先端を掴み、そのまま後ろに倒した。
「………っ…!?」
弓をしっかりと握っていた少女は、弓もろとも後ろに倒れ込んだ。
柔らかな積雪に背中から倒れ、その勢いで弓を離してしまった。
………すぐさま起き上がろうとした少女。
………が、起こそうとしたその細い首は、手放してしまった自分の弓によって押さえ付けられた。
レトは少女の弓で、彼女の首を押さえ付けたまま、暴れる華奢な身体の上に跨がり、柔らかな腹部に膝蹴りを落とした。
「……っあ゛…!?」
喉を圧迫され息がし辛い上、重い衝撃を与えられ……少女は苦しそうに咳込み、目を白黒させた。
「………」
あっという間に終わりを迎えた戦闘。
塔の影から、ユノが歩み寄ってきた。
……少女に跨がって押さえ付けたまま、じっと彼女を見下ろすレト。
ユノを瞳に捉えた少女は、苦しそうに呻きながら、痙攣する両腕を腰の剣に伸ばした。
………震えるその細い指先はたとえ剣を握れたとしても、持ち上げるまでにはいかないだろう。
それでも懸命に腕を伸ばす少女。
………そんな少女を、哀れみを込めた目で見下ろすユノ。
………そのユノの目の前で…レトは。


