亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

容赦ない重い蹴りを受け、少女は一瞬息を詰まらせた。



………そしてそのまま、なだらかな丘の斜面を転がり落ちていく。
全身雪塗れになっていく少女は斜面の中腹辺りで体勢を立て直し、数本の短剣を懐から取り出すや否や、丘の上のレトに向かって投げ付けた。



よく磨きあげられて尖った短剣は空を切り、レト目掛けて真直ぐ直進する。



……瞬時にそれら全ての位置、角度、速さを見極めたレトは、握っていた剣を大きく振り、その内の半分を弾き返した。

同時にマントをわざと翻し、当たらずに後ろへ飛んでいく短剣を巻き込みんだ。
マントの柔らかな表面で短剣の勢いを吸収し、地面にはたき落とした。


…下方の少女に視線を移すと、彼女はいつの間にか弓を構え始めていた。

一人前の狩人だけが持ち、そして持つ事を許される長い弓。



こちらを睨む少女が顔を上げた途端、番えられた氷の矢の先も、彼女の眼光同様にレトに向けられた。




「……レト…!」

いてもたってもいられず、隠れずに塔の影から心配そうに二人の対峙を覗き込んでいたユノが不意に叫んだ。



その声を合図に、少女は矢を勢いよく放した。



何物にも流されず、我が道を行く鋭利な氷の矢。

殺意を露わにしたその姿を視界に捉え、レトは握っていた剣を振り翳し………思い切り、投げた。





弧を描いて飛来する剣は物凄い速さで回転し、宙で鉢合わせになった少女の矢を、矢尻から矢羽まで真っ二つに…綺麗に断った。


両断された矢は一気に威力が激減し、レトの足元に滑り落ちた。





それとは対照的に、全く威力が衰えないレトの剣は飛来し続け…………ザクッと、少女の弓に深く突き刺さった。