―――…アルバスが空に向かって鳴き声を上げるのと、咄嗟にレトがその場から後退したのは、ほぼ同時だった。
その直後。
―――…たった今までレトが佇んでいた場所に、凄まじい勢いで上空から何かが落下した。
「………うわっ!?」
「………っ…!」
その勢いで、砂埃ならぬ雪埃が周囲に舞い散る。
濃霧の如き見え辛い視界が広がる中、レトはすぐさま腰から剣を抜き、困惑するユノの前に立って身構えた。
………落ちて来たのは、剣を構えた人間だった。
…恐らく、あの男の仲間の狩人。
前々から塔に潜んで待ち伏せしていたのだろうか。
剣を垂直に構え、レトに向かって飛び下りて来たのだ。
………アルバスがいなければ、気付く事が出来ず、今頃脳天から串刺しにされていたかもしれない。
(………危なかった…)
アルバスに感謝したいところだが、当のアルバスは落下してきた敵の勢いに吹き飛ばされ、丘の斜面を雪達磨になりながら転がり落ちていっていた。
………キラキラと細かに光る雪の粉塵の向こうは、何も見えない。
「………………塔の中で………隠れていて……」
ボソリと囁くレトに、ユノは目を丸くした。
「………そんな……独りで………!」
「―――早く!!」
やや声を荒げて叫んだ途端、視界を覆い尽くす真っ白な粉塵から、鈍い銀の光沢が現れた。
頭上に振り翳されたそれを、レトは反射的に剣で受け止めた。
―――ギィン…と、小さな火花を散らして刃物がぶつかり合った。
……純白の霧は晴れていき、ようやく、向かい合う敵の姿が浮かび上がる。


