………父さんは…大丈夫だろうか。
父に限って……とは思うものの、やはり心配になり、レトは洞穴辺りを丘の上から見下した。
……耳を澄ますと、並んだ樹木の群れの奥から、微かに刃の交わる音が聞こえてくる。
「………」
その傍らで、疲れ切ったユノはレトと繋いでいた手を解き、神声塔の黒ずんだ外壁に寄り掛かって息を整えていた。
胸に手をあて、ゼイゼイと掠れた息を漏らす。
………ふと丘の斜面を見下ろすと……。
………積雪に埋もれた丘を、羽をばたつかせながら懸命に上って来る小さな影。
………今の今まですっかり忘れていたアルバスが、育児放棄する親のレトを、ヨチヨチと追いかけて来た。
なんとか丘の天辺に上り着いたアルバスは、すぐさまレトの元に寄り添ってきた。
マントの端を咥えて甘えてくる。
………今はそれどころではない、とでも言うかの様に、レトは軽く追い払った。
「………アルバス、ちょっと邪魔だよ………」
伸ばした手の指先に、アルバスは遊んでくれると勘違いしたのだろうか……甘噛みをしようと首を伸ばして飛び跳ねた。
くりくりとした円らな瞳を真上に向けたアルバス。
その目はレトの指先を追いかけ………………。
………突然、首を傾げて、可愛らしく鳴くのを……止めた。
………急に静かになったアルバス。
そんな小さな変化など気にする程でも無いが………レトは、眉をひそめた。
こちらを見上げるアルバス。
………いや………その瞳が見詰めているのは…………自分では、ない。
………その、先…。


