亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



………父さんは…大丈夫だろうか。

父に限って……とは思うものの、やはり心配になり、レトは洞穴辺りを丘の上から見下した。



……耳を澄ますと、並んだ樹木の群れの奥から、微かに刃の交わる音が聞こえてくる。


「………」

その傍らで、疲れ切ったユノはレトと繋いでいた手を解き、神声塔の黒ずんだ外壁に寄り掛かって息を整えていた。

胸に手をあて、ゼイゼイと掠れた息を漏らす。



………ふと丘の斜面を見下ろすと……。



………積雪に埋もれた丘を、羽をばたつかせながら懸命に上って来る小さな影。

………今の今まですっかり忘れていたアルバスが、育児放棄する親のレトを、ヨチヨチと追いかけて来た。



なんとか丘の天辺に上り着いたアルバスは、すぐさまレトの元に寄り添ってきた。
マントの端を咥えて甘えてくる。





………今はそれどころではない、とでも言うかの様に、レトは軽く追い払った。

「………アルバス、ちょっと邪魔だよ………」

伸ばした手の指先に、アルバスは遊んでくれると勘違いしたのだろうか……甘噛みをしようと首を伸ばして飛び跳ねた。



くりくりとした円らな瞳を真上に向けたアルバス。

その目はレトの指先を追いかけ………………。







………突然、首を傾げて、可愛らしく鳴くのを……止めた。















………急に静かになったアルバス。

そんな小さな変化など気にする程でも無いが………レトは、眉をひそめた。





こちらを見上げるアルバス。




………いや………その瞳が見詰めているのは…………自分では、ない。






………その、先…。