男の意識が外れた本の僅かな隙に、レトはユノの手を引いたまま男の脇を通り抜け、塔のある小高い丘へ駆け出した。
男はすぐさま剣を構え直し、振り返り様に切り付けてこようとしたが……一体どれだけ速いのか、光速の如き速さで詰め寄ったザイが、男の剣の刃を根元から蹴り折った。
雪と見紛う様な細かな破片を撒き散らし、折れた刀身は宙を舞って深雪に深々と突き刺さった。
……樹木の向こうに消えていく子供二人を見やりながら男は小さく舌打ちし、ザイとの間合いを取って懐から短い棒を取り出した。
………ギュッと握ると、それは淡く光出し、枝の両端がシュルシュルと伸びていく。
……そしてそれは一瞬で、二メートル以上もある弓へと変貌した。
ザイやレトと同じ………狩人の弓。
男は弦を指に引っ掛け、大きく引き分け様とした。
が、ザイはそれをさせまいとすぐに詰め寄り、自分の弓を男の弓に強引に絡めた。
………ギリギリギリ…と押し合う長い弓。
フードに隠れた男の顔を睨み付けながら、ザイは交わる弓で隔てた状態のまま低い声を漏らした。
「―――………誰に雇われた………」
………物凄い剣幕で迫るザイ。だが、男はそれに対し、苦笑混じりの声で返してきた。
「……………誰に?………馬鹿が………それを言わないのが、狩人だろう……」
「………………狩人同士が、争わねばならない依頼を受けた貴様に………その様な事を言う資格は無い…!」
歯を食いしばり、ザイは唸った。
「………ふん…古い考えだな………そんな真っ当な生き方じゃ……やっていけないぜ…?」


