亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~












………十メートル程先の銀世界に佇む、ピクリとも動かない人影。


……獣に見つかりにくい擬態色である、雪と同じ純白のマント。

深く被ったフードで、その面は隠されていた。

………中年…いや、もう少し若い男だろうか。痩せ型だが、がっしりとした体格だ。







………奇妙な程…気配が、無い。
今こうやって前にしているのに、全く気配が感じ取れない。




………まるで……まるで。



















(―――…狩人…?)






ザイやレトと同じ様な空気を纏っている。
何よりも、この絡み付く視線。



………突き刺す様なそれは、真直ぐ……ただ真直ぐに………自分にだけ注がれている。





………静寂漂うこの間。

互いに見詰め合うこの奇妙な時間。










………。




















「………」

……無意識に、ユノは一歩後退した。

何故だか分からないが………。






本能が、そうさせた。







本能は何と言っている……?


何て喚いている?





次第に困惑する頭は、何をすべきか判断出来ないでいた。



……また一歩、後退した。






「………っ…」




すると今度は、前方の男も数秒遅れて僅かに動いた。

前に、一歩。






距離を詰めていくかの様に。
















………その時、一日ぶりの風が大地に吹き渡った。




少し大きな風は勢いを付けて、ユノと男の足元を駆けていく。



互いのマントが呼応して、大きく波打ち、翻った。