………十メートル程先の銀世界に佇む、ピクリとも動かない人影。
……獣に見つかりにくい擬態色である、雪と同じ純白のマント。
深く被ったフードで、その面は隠されていた。
………中年…いや、もう少し若い男だろうか。痩せ型だが、がっしりとした体格だ。
………奇妙な程…気配が、無い。
今こうやって前にしているのに、全く気配が感じ取れない。
………まるで……まるで。
(―――…狩人…?)
ザイやレトと同じ様な空気を纏っている。
何よりも、この絡み付く視線。
………突き刺す様なそれは、真直ぐ……ただ真直ぐに………自分にだけ注がれている。
………静寂漂うこの間。
互いに見詰め合うこの奇妙な時間。
………。
「………」
……無意識に、ユノは一歩後退した。
何故だか分からないが………。
本能が、そうさせた。
本能は何と言っている……?
何て喚いている?
次第に困惑する頭は、何をすべきか判断出来ないでいた。
……また一歩、後退した。
「………っ…」
すると今度は、前方の男も数秒遅れて僅かに動いた。
前に、一歩。
距離を詰めていくかの様に。
………その時、一日ぶりの風が大地に吹き渡った。
少し大きな風は勢いを付けて、ユノと男の足元を駆けていく。
互いのマントが呼応して、大きく波打ち、翻った。


