亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


―――不自然に空いた眩しい光の口に飛び込んだ途端、ブーツの底に感じる地面の感触が一変した。


固い地盤から、サクサクと柔らかい深雪へ。
…窮屈だった洞穴の空間から、無限に広がる外の世界へと出ていた。




厚い雪雲で覆われた薄暗い昼の世界だが、暗闇から抜け出してきたユノにとっては、どれも眩しい存在だった。




凍った樹木が立ち並ぶ、純白の銀世界。

永遠と続く樹々の群れの景色の中に…ユノは、堂々と天を貫く勢いでそそり立つシルエットを見た。







………小高い丘の上。

薄汚れた、微動だにしない円柱の塔。
















「…………………神、声…塔………」

息も絶え絶えに、巨大な塔を見上げながら、ユノは一歩一歩雪の中を進んでいく。




二つの目は、もう痛くなかった。


身体の疲れもさほど無い。






(………早く……あの、塔へ………)


重くなった足で深い足跡を雪路に残し、前へ……前へ。








………静かだ。


…風が無い。鳥の囀りも、獣の遠吠えも、何も聞こえない。

ユノを取り巻く世界は、今や視界のみ。

瞬きを繰り返し、時折疼く目を擦った。





…眼球がほんのりと熱い。


足を止めぬままゴシゴシと両目を擦り、再度前へ視線を移した。



















光を与えられた瞳は、鮮明な景色を映し出し…。























……本の、数秒前までは無かった筈の影を、視界に捉えた。





















……反射的に、ユノは足を止めた。








………静物画の様な景色の中央に、人間が、いた。