亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

前を見ても、見上げても、見下ろしても。


瞳に映るのは真っ黒な空気。漆黒の闇。




……進んでも進んでも、先は見えない。

―――怖い。

…怖い。


とても、怖い。






しかし、振り返らない。
振り返りなど、するものか。





…側にいるのは偽りの人間。仮面ばかり。

だから、もう、いい。

そんな奴等に囲まれているのは、もうたくさんだ。





僕は独りで良い。

独りで………使命を果たすんだ。



誰の力も要らない。

皆、あっちにいってしまえ。


消えてしまえ。














「…………はぁ…………ぁっ………はぁ……」


いくら転ぼうが、氷柱に衣服を引っ掛けようが、擦り傷を作ろうが……ユノは走り続けた。

聞こえるのは自分の乱れた息遣いと、もうフラフラで力の入らない両足が鳴らす足音。




………目が…痛い。


…まだ、赤くなっているのだろうか。


この力を使うと、体力がドッと減る。
……故意に使っている訳では無いのだが。


(………)


額に張り付く髪を振り払い、マントの端を引き寄せ、無我夢中に走り続ける。


















『―――貴方様のお祖父さまである前デイファレト王は、それはそれは素晴らしい御方で…』

『―――稀に見ない優れた御方。王の中の王で御座いました』

『ユノ様もお祖父さまに並ぶに値する、立派な方に…』

『少しでも並べる様に…』




















底知れない闇の向こうに、真っ白な閃光が顔を覗かせた。

歪な円を縁取った光は、徐々に大きくなり…。