パキパキパキ、パキ……。
漆黒に塗れた視界の中で、乾いた音がはびこっていく。………空間そのものが、凍て付いていく。
……この奇妙な現象を目の当たりに、警戒するザイの背中で、掠れたサリッサの声が耳元で聞こえた。
「………いけない…。………ユノが………」
「………王子?………サリッサ殿………これは王子が……?」
ブーツの下の地面が半透明の氷で覆われていくのを見下ろしながら、ザイは辺りにも目を凝らす。
「………………ユノの…王にしか扱えない…白の、魔術です……。………あの子はまだ幼子で、王として君臨していないのに、白の魔術が使えるのです………でも………」
脇に並ぶ氷柱の一部が、弾かれた様に細かく砕け散った。
冷たい氷の結晶が、髪や頬に掛かった。
「………使えると言っても……まだ上手く調節が出来ないのです…。………怒ったり、悲しんだり………とにかく感情が高ぶると、勝手に暴発してしまうのです………。……あの子自身には害は無いのですが……」
ユノ自身には何の害も無い。
しかし……周囲の人間には…。
「―――走る。しっかり掴まれ」
気持ちの悪い……嫌な予感がした。
焦燥感に身を任せ、ザイはサリッサを抱え直して足早に洞穴内を駆けた。
ひび割れた氷の大地を蹴って、白き力の根源を目指す。


