「………………あの………あのね……僕………まだ赤ん坊の頃に母さんを亡くしたから……よく……分からないんだけど……」
「―――」
「……その…お母さんは………お母さんっていうのは………一人しかいないから………………」
「―――」
「……………………………大事に……した…………方が………………………」
「―――そうだよ。母親は、一人さ」
始終無言だったユノは、突如ピタリと足を止め、振り返った。
……いきなり振り向かれたレトは、ビクリと身体を震わせた。
目と鼻の先にある綺麗なユノの顔が、ランプの揺れる淡い明かりでぼんやりと浮かび上がった。
半ば睨む様な目付きで、ユノはレトをその瞳に映す。
「………悲しい事に、残念な事に………………母親は一人だけ。……………唯一の僕の母は………あの人なんだ………!」
少年の幼い顔が、怒りか、苦痛のためなのか、徐々に歪んでいく。
「………恥さ。恥なんだよ。………………僕の………この僕の唯一の……生涯消えない汚点だよ!」
「…汚点………?」
「そうだよ!僕の母親は……お母様は………そういう存在でしかない!………王になる僕の、汚れた部分…!」
………制御が利かない程苛立った彼の言葉の数々は、レトを呆然とさせた。
サリッサへの………唯一無二である母親への痛々しい中傷。
………汚点?
………汚点とは?
狩人という孤独の世界で生きるレトに、その汚点の意味など分かる筈も無く…。


