………苦笑を浮かべるだけで、何も言わないサリッサ。
ユノの…この、傍若無人ぶりにはさすがのザイも、微かに眉をひそめた。
…ユノはサリッサを見ようともせず、不機嫌な様子で顔をしかめたまま、呆然とするレトの手を再度取った。
「………お母様はザイに任せるよ。………すまないね。…………………………行こう、レト」
そう言うや否や、ユノは洞穴の奥に向き直り、レトを強引に引っ張って歩き出した。
手を繋ぐと言うより、手首を掴まれている状態で……。
レトはおろおろしながら、サリッサとユノを交互に見やっていた。
………明かりを持っているのはレトだけ。
後ろのザイとサリッサの姿は、闇に塗れて直ぐに見えなくなった。
………ゴツゴツとした狭い洞穴を、ユノは無言で足早に進んで行く。
途中、そんな凸凹道で躓きそうになったが、そこは咄嗟にレトが支えた。
………しかし礼も言わず、ユノはそのまま歩き続ける。
………前にもこんな事があったが…今回は、以前にも増して更にピリピリしている様に思える。
………怖い。
……前を見れば、青い光沢を放つ綺麗な髪が揺れている。
自分の手を引いて前を歩く……同じ背丈で、華奢な背中。何処と無く気品を感じさせるその姿も、今は険悪な空気を漂わせていた。
………無言のその背中に向かって、レトは思い切って声を掛けた。
「………君のお母さん……大丈夫…かな…」
「―――」
………返事は無い。
互いの息遣いと、テンポの早い足音しか返ってこない。


