亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


濃い影を従えて暗闇から現れたのは………後から追って来たザイだった。

そして彼がその広い背中に背負っているのは………。







………顔面蒼白でうなだれたサリッサだった。
淡い明かりに浮かび上がった彼女はぐったりとしており、ザイの背中に全てを預けている状態だった。




「………ここに来るまで……そのすぐそこで倒れていた…。………先を急ぐあまり、注意が届いていないぞ…レト…」


低い声音でレトを見下ろすザイの目は……少し、怒っていた。

…レトは無言で静かに俯いた。



「………………ごめんなさい…」

倒れた依頼人に気付かず、ほっぽりだすなど、あってはならない。最後尾にザイがいたから良かったものの…。




「……………良いんです。………急に倒れ込んでしまった私が悪いの……」

ザイの背中で、会話を聞いていたらしいサリッサが顔を上げた。

……酷く疲れていて、目は虚ろだ。
だが、無理して笑顔を浮かべている。


「………………ごめんなさいね…謝るのは私の方よ。……………………ちょっと…身体が弱いの。……先を急いでいるのに……」


申し訳無さそうに苦笑するサリッサの姿が、なんだか……痛々しい。

……そんな事無い、とレトが口を開こうとした直前、それとは真逆の、何とも心無い呟きが間に割って入って来た。





「―――……全く、その通りだ。………お母様、僕らの足を引っ張る様な真似はしないでくれたまえ。……………………迷惑なんだ…」






………それは、サリッサの子であるユノの口から出た台詞だった。
嘘でも何でもない。それは明らかに……本心からの………。