亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



柔らかいランプの明かりは、真っ暗な洞穴の腹の中をぼんやりと照らした。
足元は透明な氷が張り、天井は長い氷柱がだらしなく何本も垂れていた。


中は外よりも冷たく、吐く息は白い濃度を増していた。

個々の異なる息遣いと足音が、反響して洞穴内に響き渡る。



……妙な恐怖を感じさせる暗い世界だったが、その空気も、ヨチヨチとついて来るアルバスの可愛い独り言で雰囲気はぶち壊しだった。



それが良かったのだろうか。

嫌々ながら入ったユノも愚痴一つ漏らさず、むしろ探検気分でご機嫌だった。


………この王子様のご機嫌パロメーターは、どの辺が基準なのか分からない。








「…何処まで続くのかな?まるでここは夜だね。隔離された夜だよ」

「………この岩山………横にも縦にも長いし…この道は一本道だけど、直線じゃなくてぐねぐね曲がりくねっているんだ………………まだ少し歩かないと…いけないと……思う」


鼻の奥を刺激する冷たい空気が、暗闇の奥から漏れてくる。

だがそれは微かで、穏やかな空気の流れ。
出口まではまだ距離がありそうだ。




「…この洞穴内の氷柱、やけに綺麗だね。……光の具合でこう見えるのかな?先端が黄色く光ってる…」

もっとよく見ようと氷柱に手を伸ばしたユノ。
その手を、レトは素早く掴んだ。



「………触ったら駄目。……………こういう洞穴内にあるものは、注意した方がいい。…………先端で光ってる黄色いのは、多分虫の毒だよ。………肉食虫っていう虫でね………身体から猛毒の分泌液を出して、こんな氷柱や枝の先なんかに付けるんだ…」

「……え……それ、どうなるの…?」