それらの穴が全て吹き抜けであるという訳ではなく、たまに行き止まりだったりする。
ポッカリと口を開いた大きめの穴を見つけ、空気の流れを確認した。
冷たい微風が、頬を撫でる。
獣など、何もいないか確かめるため、暗い洞穴の口に向かって幾つか石を投げた。
獣の世界では、今は産卵前の時期。
たんまりと栄養を蓄えて、巣で大人しくしている筈だ。
………同時に、凶暴化する時期でもある。
よくよく注意しなければならない。
洞穴から聞こえてくるのは、小石が叩き付けられる音だけ。
生き物の気配は無い。
(………大丈夫…かな…)
「チチチ、チチチチチ」
……いつからそこにいたのか。
いつの間にかアルバスが足元で飛び跳ねていた。
小さな嘴で、レトのブーツを何度もつつく。
「………」
「チチチチチチ」
「………」
「チチチ、チチ」
………ふと、ある考えがレトの脳裏を過ぎった。
そして彼は何の躊躇いも無く、実行に移すべくアルバスに手を伸ばした。
……丸みのあるフカフカの小さな身体を背中から鷲掴みした。
アルバスは暴れる事無く、レトの顔を不思議そうに見詰めながら可愛らしく鳴き続ける。
そんな無邪気で可愛い幼子を、レトは無表情で…。
……………洞穴に、投げた。
ブンッ、と勢いを付けて無慈悲にも投げ飛ばすと、「チィーー…」とかか細い鳴き声が余韻を残して暗い闇の向こうに消えていった。
………何か、柔らかいものが落ちる様な、間の抜けた音が奥から聞こえてきた。


