…一瞬、沈黙が過ぎったが、ユノの元気な掛け声で不穏な空気は吹き飛んだ。
「疲れるし危ないし何だか不安だけど、この旅自体が不安いっぱいだからね。早くその洞穴とやらを抜けてしまおう」
おーっ、と拳を上げるユノに続き、その隣りでレトも控え目に拳を上げた。
……その足元で、チチチ、と鈴の音の様に甲高く鳴きながら飛び跳ねるアルバス。
この小さな雛は、そのか細い二本足で懸命について来る。
度々積雪に埋もれ動けなくなったが、羽をばたつかせて何とか雪中から脱出してくる。
レトはただただ無関心で、アルバスが谷から落ちそうになろうが、転倒した挙げ句雪だるまになろうが、完全放置だった。
ザイやユノに言われ、思い出した様に何処かで動けなくなっているアルバスを迎えに行く。
………レトの中で、アルバスの存在は無いに等しいと言ってもいい。既に、食材であったことも忘れている様だった。
一行が凍て付いた樹木の群れを歩いて行くと、ザイの行った通り、その先には森を横断する長く険しい岩山が堂々とそびえ立っていた。
向こう側にある筈の神声塔の姿が隠れて見えない。
この岩山を洞穴無しで越えるとすれば、切り立ったこの岩肌をひたすら登るか、迂回せねばならないところだった。
………こんな辺鄙な場所で採掘が盛んであった事を、感謝する。
「……レト、洞穴を見てきなさい。中に何もいないか確認するんだぞ…」
「…分かった」
言われた通り、レトは一人岩山に近付き、ゴツゴツとしたその表面を見回した。
積雪に埋もれていたり、崩れた岩で塞がれている洞穴が幾つもあった。


