「………見えるか?」
昨夜の猛吹雪が嘘の様に、日が上った今朝は静寂漂う物静かな銀世界が広がっていた。
一晩泊まった納屋を後にし、深い積雪を踏み締めて先を急ぐ中、針葉樹林の群れで覆い尽くされた視界の向こうにザイが指をさして言った。
彼の切り傷だらけの指が指し示す方向には、樹々とは明らかに違う細い円柱のシルエットが一つ。
漂う純白の靄が、その影を曖昧な形に映し出す。
「………あれが、神託の柱。………神声塔だ」
……天に向かって高く伸びた柱は、物静かで厳かな存在感を醸し出していた。
長い歴史を思わせるその姿は酷く黒ずんでいて、氷点下の風に晒された煉瓦造りの表面は凍り付いていた。
……天辺までどの位あるのだろう。
近くまで来ているとはいえ、まだ少し歩かねばならないこの距離でも、頭を上げて見上げなければならない程高い。
「……………あれに昇るの…?」
げんなりとした表情で、ユノは溜め息を漏らした。
「…あそこまで行くには、道を遮る岩山を越えなければならないが、この辺りは昔採掘をしていた地域で、当時から残っている洞穴がいくつもある。………そこを通り抜けて行くつもりだ」
「……へー…ザイって地理に詳しいね。レトも通った事あるの?」
岩山と聞いて更に気落ちしていたユノは、ホッとしながらレトに訊いた。
「………うん。小さい頃に一度通ったよ。でも………入った所が獣の巣穴で………ちょっと、危なかった」
「………そう…」


