今までに体験したことのない暑過ぎる、眩し過ぎる太陽をじっと見上げる。
…じっと見据えたまま目を逸らそうとしないのを不審に思ったのか、後ろに並んでいるマントを羽織った二人の内の一人の兵士が、訝しげな顔で声を掛けてきた。
「………どうかなさいましたか…?」
「………いえ…」
……視界の青空の隅に遠ざかって行く巨大な鳥の影を目で追い、フッと視線を逸らした。
「………………昔、よく射落とした鳥が飛んでいたものですから。………少し思い出していたのですよ…」
フフッ、と笑みを漏らし、白髪混じりの髪を隠す様にフードを深く被り直した。
背後の兵士は首を傾げる。その隣りに並ぶもう一人の兵士は、何がおかしいのか、フードの中で苦笑を漏らした。
「………おや、あれが城ですかな…?」
ひたすら歩いた末に見えてきたものは、巨大な白い切り立った岩山。
………いや、城だ。
フェンネルの装飾が施された美しい城とは違い、あれは切り立った崖を思わせる様な、殺伐とした景観を持つ城だった。
少し離れて前を歩く案内役の人間は、こちらに振り返って頷いてきた。
「―――……距離はまだある。もう少し歩くことになるが……平気か…?」
「……ええ。まだ体力は有り余っております。気を遣わせて申し訳ありません」
にこやかに答えたが、フードの下から覗く赤褐色の顔は、相変わらず仏頂面だった。
歩きながら、案内役の人間と使者の長を勤める人間同士、互いにポツポツと言葉を交わした。
「――…入城される前に、色々と尋ねることになるが。……まずは貴殿の名を伺っておこうか…」
「………ああ、申し遅れました…」


