そんな今も、ユノは何故か至極ご機嫌らしく、隙間風の冷たさなど気付いていないくらいだ。

部屋の暗い角に座るのが癖であるレトは、この納屋に入るや否やす―っと流れる様に隅に行き、音も無く腰を下ろした。

そして何故か、ユノはその隣りによいしょと座り込み、直ぐにレトに話しかけ始めた。




ユノからの一方的な話題は、レトの武装についてだった。

普段は厚いマントで全身をすっぽりと覆い隠しているレトだが、戦闘に入るや否や何処からともなく剣を二本、三本と取り出す。


ぼんやりと聞いているレトに、ユノはマントを脱げと半分命令口調で言った。


「…レト、君………持ち過ぎだよ…」

「………」


取敢えずマントを脱いで正座をしたレト。

内側に着ていたのは、獣の皮で作られたマントと同色の白の衣服。寒さを防ぐため、動き易いようにするため、肌にぴっちりと合った皮服だ。

レトの細い腰を締めた太いベルトには、左右にズラリと光るナイフが並んでいる。
腕や両太股にも、サバイバルナイフ並の鋭利な刃物が覗いていた。

よく見ると背中には、鉈包丁に似たゴツい剣が隠れている。




………歩く凶器、と言ってもいい。


「……………靴の中にもあるよ。……………………あと、踵の部分と……服の袖の中と……………あ、奥歯の隙間に……」

「もういいよ、レト。何だか僕、見るだけで疲れた。……多過ぎるよ…」

「…………………………父さんの方がもっと持ってるよ……」

呆れ顔を浮かべるユノの前で、一本一本ナイフや短剣を外して置いていく。


………これだけで刀剣の商いが出来そうだ。