「短剣とナイフって、全部で何本持っているんだい?」

「………………数えた事、無い」

「じゃあ今数えてよ」
















神声塔はあと少しという距離。
半日歩けば着くが、ユノとサリッサの体力を考慮し、ひとまず近くの小さな街で一晩過ごす事となった。



狩人という身分は、このデイファレトでは奴隷に等しく、浮浪者同然の彼等を中に入れてくれる街は、少ない。

依頼主がその街にいたり、或いは街自体が貧しかったり、それなりに金を持っていたりすれば、入る事は可能だ。


だが結局のところ、入っても入らなくても扱いは一緒で、一晩借りられる宿は家畜の小屋か、物置同然の納屋。狭く汚い場所と冷たい視線を与えられるだけで、良い事は一つも無い。

食料やら水は自分達で何とかしてくれ、ただし街の物に手を付けるな………といった酷い扱いだ。





……この国は、身分差別が激しい。





レト達もお金を払い、ようやく屋根のある場所にこぎ着けたが………借りる事が出来たのは、隙間風があちこちから吹き付ける、藁だらけの小ぢんまりとした納屋だった。



ちょっと憤慨したユノが、僕が物申す…!と文句を言いに行こうとしたが、それをザイが素早い身のこなしで引き摺り戻してきた。


……ユノは堂々と、ちょっと不快な事あらば他人に己の真の身分を明かそうとするため…レトも気が気でない。


「僕を誰だと思って…」と、全てを言い終える前にレトが口を塞ぎ、続いてザイが前を塞ぎ、サリッサと共に大人二人で頭を下げる……というサイクルが出来上がりつつあった。


その後はしばらく…王子様は拗ねて不機嫌なのだが、何の前触れも無くコロッと明るくなる。