亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


勿論、案内役の人間には真直ぐ城へ誘導する様に指示はしてある。
国家レベルの重大な任務なのだから。

監視役である自分も、頭上から彼等に不審な動きが無いか目を凝らしている。

………少しでも何かしてみろ。確定的な敵と見なし、直ぐにでも八つ裂きにして戦火を撒き散らしてやる。

………デイファレトの様に。



(………しかし…不用心なことだな……)

……使者達の明らかな軽装を眺めながら、半ば呆れているウルガ。………不用心と言うよりも……舐められているのだろうか。
………敵意は無いという現れだろうか。







頭上をしばらく旋回し、少し離れようとエンに指示をしようとした。

………ふと行列に目をやると……。














使者達の一番前を歩いている人間が、歩みはそのままで上空を見上げていた。



………こちらを見て…。



















遥か下の地上。

あんなに小さく見えるのに。


顔など分からないのに。


















バチッと、視線が重なった気がした。

……凝視。



ヒシヒシと感じる視線。
これは気のせいなどではない。

見られているのだ。






「………………」


………言い様の無い、居心地の悪さを感じた。
ウルガはそのまま旋回し、更に上空へと上がる様に指示した。




目下の行列が、また小さくなっていった。