亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



始終、憎らしげに見上げてきていた彼女の顔は……今は、訝しげな……不思議そうにものを見る様な表情を浮かべていた。



ややつり上がった綺麗な瞳が、真直ぐに……ウルガを映す。






















「―――………正義感に溢れた…………そんな…澄んだ目をしているのにね……」










「―――」

























そんな台詞を吐き捨て、ドールはマントを翻し、ギラギラと照りつく陽光が差し込む門の向こうへと、消えた。





何も無い、真っ赤な砂漠の真ん中を、小さな彼女が歩いて行く。



砂埃と蜃気楼を背景とした砂漠。


………ドールの前方に、不意に…小さな砂埃が舞い上がった。


砂埃がおさまると同時に現れたのは、巨大な獣の群れ。


体長約10メートルは越す真っ白な巨体は、巨大なワニの様な姿をしている。




………バジリスクだ。
あの群れは賊が飼っているバジリスクだろう。………リーダーを迎えに来たのだ。






ドールは何の躊躇いも無く、その内の一頭の頭に飛び乗った。


……その直後、バジリスクの群はゴツゴツとした太い四つ足を動かし、砂を掻き分け……まるで水上を泳ぐかの様に、物凄い速さで砂漠を泳いで行った。






…赤い砂嵐が吹き渡る。




バジリスクも、ドールも、完全に見えなくなった砂漠をしばらくじっと見詰め………ウルガは踵を返した。





……相棒のエンにでも会いに行こうかと、塔に続く螺旋階段に目を移した途端…。






………ウルガは思わず、硬直した。





















「………」

「―――」