少女という言葉では収まり切らない、勇ましい少女の後ろ姿を見下ろしながら、ウルガは黙って歩いていた。
謁見の間を後にし、このドール嬢を警戒しつつ城の外へ送っていたが………その間、奇妙な沈黙が続いた。
………カツカツという、互いのブーツの踵が鳴り響く。他の兵士達は二人の遥か後ろに続いていた。
何かあれば直ぐに走り寄って来るが………はっきり言って、ウルガ一人で充分だ。
「―――………品が無いわね、ジロジロと見ないでくれる…?」
「………」
視線を感じ取っていたらしいドールは、ギロリとウルガを一瞥した。
………品が無いなどと……唾を吐いてきたお嬢さんが言うのは何だか矛盾している様に思えるが………寡黙なウルガは何も言わない。
「………貴方、ウルガとかいう名前だったかしら?」
「………」
「………貴方、どうしてそんなにこの腐った国に忠実なのかしら?………………馬鹿みたいに…」
フフッ…と、小さな含み笑いが聞こえた。
………忠実?………それは兵士として当たり前だろう…。
………この少女は、何を言っているのか。
………賊側の人間から見れば、王に仕える兵士は皆異様に見えるのだろうか。
「……………おかしい人。………貴方は、自分に嘘を吐いてるのね?………何処かで貴方は、矛盾を感じているのではなくて?………何故こんな悪政の下で、大人しく働いているのかしら………」
「………」
外に通じる開け放たれた門が見えてきた。
ドールは不意に、振り返った。


